酸化と燃焼
食材にもっとも起こりやすい化学変化が酸化です。酸化は、その名の通り空気中の酸素と化合することにより、酸化物に変化する反応です。この反応は、空気との接触が多いほどまた温度が高いほど速度が上がります。したがって、空気中で高温加熱する場合は酸化が進み過ぎないように注意が必要です。
酸化は通常発熱反応なので、その熱により連続的に酸化反応が加速され、大きな熱量を解放する現象を燃焼と言います。ある物質が空気中で自発的に燃焼を始める温度を発火点と言います。発火点は化学的に決定されるものではなく、その物質の形状、空気との接触度合いなどの物理的な状況により変化します。
食材の発火点
食材の発火点は、その食材に含まれる物質の発火点のうち最も低いものと考えられます。
右表は食材に含まれる有機物である植物性油脂、動物性油脂とでんぷんの発火点です。
多くの食材は多種の物質の混合物なので、発火点に至っても一気に燃焼が進むことはまれで、部分的な燃焼により有機物が酸化されて炭素の結合体が残されるいわゆる炭化が起こります。
有機物 | 発火点 |
---|---|
オリーブオイル | 320℃ |
菜種油 | 315℃ |
ラード | 343℃ |
でんぷん | 381℃ |
酸化と雰囲気
酸化が進むには酸素が必要です。一般の環境では空気雰囲気なので酸化に必要な酸素は十分に供給されます。したがって、空気のような有酸素雰囲気の中では食材を高温に熱すれば酸化が進み、さらに高温になると炭化(焦げ)が発生します。
過熱水蒸気ジェネレータによる低酸素環境
過熱水蒸気ジェネレータは、密閉された内部で100%水蒸気の気体を生成します。空気の混入は極めて少ないため、低酸素雰囲気を作り出すことができます。これにより、有酸素雰囲気下では酸化や炭化が進んでしまう300℃以上の高温下の加熱処理を行うための低酸素環境を提供します。