油脂とは

脂質の一種で、天然由来の脂肪酸と3価のアルコールであるグリセリンとのエステル化合物を指します。

天然の油脂の大部分は3分子の脂肪酸が結合したトリグリセリド(トリ-O-アシルグリセリン)で、ほとんどが複数のトリグリセリドの混合物です。

油脂の性質は、主に結合している脂肪酸の種類によって定まるため、主要成分の脂肪酸の名称で呼ばれることがあります。

油脂の液化

食材を加熱すると最初に水分が表面にしみ出し、表面温度が100℃になると水分が気化して気化熱を奪うため表面温度は安定します。この後、食材内部の温度が上昇しますが、食材に含まれる油脂の融点はほとんどが100℃以下ですので、液化した油脂が水分に混じってしみ出してきます。

油脂の沸点は一般的に水より高いので、表面に染み出た油脂が水分の気化を抑え、乾燥の速度は低下します。水と油では比重が違うため、この段階で分離することができれば乾燥の速度を加速することができます。ロータリーキルンのような攪拌型の乾燥室を使用すると油の分離が難しく、油脂分の多い食材の乾燥には時間がかかることがあります。一方、静的な乾燥室の場合はオイルパンを設置することで、液化した油脂を集め、より乾燥効率を高めることができます。

油の沸点

油(液化した油脂)の沸点は、油が単一の化合物ではないため、明確に示すことはできません。しかし、油脂を構成する脂肪酸は単体の化合物であるため、沸点を計測することができます。油脂に多く含まれる脂肪酸の沸点は油脂の沸点と大きな差は無いと考えることができます。

脂肪酸多く含まれる油脂沸点
パルチミン酸動植物油脂、ヤシ油351℃
ステアリン酸動物油脂、牛脂361℃
アラキジン酸動植物油脂、落花生油328℃
オレイン酸動植物油脂360℃
リノール酸動植物油脂、紅花油230℃
αリノレン酸植物油脂、シソ油443℃
γリノレン酸植物油脂、月見草油379℃
アラキドン酸動物生体膜169℃
EPA(エイコサペンタエン酸)イワシ油、牛肝439℃
DHA(ドコサヘキサエン酸)魚油446℃
Table 脂肪酸の沸点

高熱処理による脱脂

300℃以上の過熱水蒸気による高熱処理は、食材に含まれるさまざまな油の沸点を超えて、油を気化させることができます。食材毎に適切な温度で高熱処理を行うことで、水分だけでなく、油分も抜けたこれまでにない状態の食材を生み出すことができます。